■ 不倫による慰謝料請求
「夫(または妻)が不倫をしていて、夫(または妻)の不倫相手に慰謝料請求をしたい」といったご相談はよくあるパターンです。
不倫や浮気という言葉は俗語であり、実務上では民法770条1項1号に定めのある「不貞」という言葉を使います。不貞とは、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを意味しています(最高裁昭和48年11月15日判決)。
ここでは、不貞による慰謝料請求について詳しく見ていきましょう。
● 慰謝料請求が可能なパターン
夫婦が離婚をした場合、不貞による慰謝料請求をするためにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
① 不貞行為があったこと
不貞行為とは、簡単に言えば配偶者以外の異性と性行為などの肉体関係を持つことを言います。
② 不貞の相手に故意又は過失があること
不貞行為を働いたことに加えて、不貞の相手に故意又は過失があることが必要になります。ここで言う故意又は過失とは、不貞行為の相手に配偶者がいると言う事実を知っていたのに不貞を働いた場合には故意となり、配偶者の存在を知らなかったとしても知ることができたような場合や知るべきであった場合には過失に該当します。
これらの条件に該当すれば不貞による慰謝料を請求することができます。
● 慰謝料請求ができないパターン
一方で、不貞があっても慰謝料を請求できないような事情もあります。
① 婚姻関係の破綻
夫婦間の婚姻関係がそもそも破綻していたのであれば夫婦の権利侵害をしたとは評価できないからです。
② 故意又は過失でない時
不貞を働いた相手が故意又は過失に該当しなかった場合も慰謝料は請求できない可能性があります。
③ 時効を迎えてしまった場合
時効については次章でご説明いたします。
■ 注意すべき時効制度の存在
不貞による慰謝料請求で最も注意すべきことは時効制度が存在すると言うことです。民法では、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を定めています(民法724条)。これによると、配偶者に不貞相手がいるということと不貞行為による損害を知った時から3年間、慰謝料請求権を行使しなかった時に、時効と不貞行為の存在があったことを知らなかったとしても、不貞行為が行われてから20年間この権利を主張しなかった場合には、慰謝料請求権は時効によって消滅することになってしまいます。また、不貞によって離婚をしたか否かによって慰謝料の請求相手が変わるため、時効の起算点が変わることにも注意が必要です。離婚をしなければ請求相手は不貞行為をした相手方になり、不倫の事実をして3年以内となりますが、離婚をした場合に離婚相手である元配偶者に対して慰謝料請求をする場合には、起算点は離婚をした日から3年以内に変わります。
このように、不貞による慰謝料請求には請求権が認められる事情があるにもかかわらず、時効という制度によってその権利を失ってしまう恐れがあります。そのような不利益を受けないためにも不貞が発覚した時点で慰謝料請求のご検討をされる場合には、法律の専門家である弁護士にご相談することをお勧めいたします。
安藤武久法律事務所は東京都港区・大田区・練馬区・文京区を中心に、千葉県や埼玉県、神奈川県において皆さまからのご相談を承っております。
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